阿含宗開祖・桐山靖雄大僧正の著作、『説法六十心1・2』は『大日経』の「住心品」に説かれる、「六十心」について解説した説法集です。「六十心」とは、人の心を六十に分類したものです。本書は、多くの人から相談を受け、さまざまな指導をした著者ならでは、心のカルテともいうべきものです。仏教だけでなく、心理学に興味のある方にも、大いに参考になることでしょう。
前回ご紹介した阿含宗の書籍↓
『説法六十心1・2』とは
本書では人が持つさまざまな心を分析し、その欠点を明らかにして、仏心という「円満な心」を持つための指針が示されています。仏教の心理学書、しかも実践的な心理学書と言えるでしょう。
仏教、特に密教では、凡夫の身口意(しんくい)の三業(さんごう)を、仏の身口意の三密(さんみつ)と一体にすることを目指します。
身口意とは、
- 身……体による行動
- 口……言葉
- 意……心と心に思うこと
です。特に基本となるのが心(意)で、心に思ったことが言葉(口)や行動(身)となって表れる、と仏教では考えます。
ですから、心を仏心へと近づけることは、言葉や行動も仏に近づけることになります。そのために、『大日経』「住心品」には、六十の心の分類が示されているのです。
書籍の内容
『説法六十心1・2』には、「貪心」を筆頭にさまざまな心の特徴、欠点が描かれています。しかも経文の解説だけではなく、著者が宗教家として長年、多くの人の相談を受け、指導をしてきたことに基づく視点からの、確実な考察が加えられております。
「人の心はコロコロと変わるから心というのだ」
という小咄のようなものがありますが、実際に一人の人間でも、あるときは貪りの心を起こし、またある時は怒り、またある時は菩薩のような心を見せます。
仏を目指す修行者はもちろんのこと、世間をよりよく生き抜くためにも、本書のような心の考察は欠かせないのではないでしょうか。
書籍を読んでもらいたい人
仏道修行を深めるためには、自他の心を分析することは不可欠です。実際に、お釈迦さまの仏教には、自分の心を一つ一つ客観的に観て、悪い心を陶冶(とうや)していくという瞑想修行があります。人がどのような心を持っているのかを見ていくことは、そのような瞑想修行にとっても大いに役立つでしょう。
また、本書を仏教の精神分析の書と捉えて、心理学を学ぶ人が読んでみても、大いに役立つと思います。
どのように役立つのか
人と人とのつながりで、この社会は成り立っています。人と人とのつながりとは即ち、心と心のつながりです。ですから、そのつながりを上手に運ぶには、人の心を読み取ることが大切ではないでしょうか。
したがって、人の心を細かく分析した本書は、どのような人にも役立つ書だと言えます。勤務先でも、学校でも、家庭や親戚内でも、心の分析は役に立つわけです。
まとめ
本書は、仏教の根本思想に照らしながら、実際の体験を加えて解説した「心の分析書」です。人を知ることは心を知ることです。日常にすぐに役立つ本ですから、ぜひお読みになると良いでしょう。